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登山と旅のコース案内

中通りエリア1泊2日

ブナとアスナロの原生林に抱かれる!高校山岳部と登るふたまたやま

ライティング:ガッツ遠藤/カメラ:水谷和政/モデル:県立福島高校山岳部/スペシャルゲスト:貫田宗男

おわんをふたつ並べてかぶせたような特徴的な山容のため、県内のほとんどの山から見つけられる二岐山。標高は1544mで、正直、そんなにメジャーな山ではないけれど、地元の人に愛され、守られ、登られている山、それが二岐山です。今回は、この地元愛あふれる山にふさわしく、県内の高校山岳部の生徒たちとともに登ってきました。
加えて、登山家で、「世界の果てまでイッテQ」の登山部顧問でもあり、“天国じじい”のニックネームで人気の貫田宗男さんをスペシャルゲストとして迎えるという豪華っぷりです。
さて、どんな山旅になるのでしょう。期待に胸躍らせ、福島へと向かいました。

今回のコース案内は とことんスペシャル! まずは動画でレポートの様子をご覧ください

こらんしょ!福島の山【前編】
「福島高校山岳部」

こらんしょ!福島の山【後編】
「二岐山登山」

1日目 山麓の自然、文化、食に触れる

山岳部の部室を突撃訪問

二岐山のコースタイムは標準で約5時間なので、日帰り登山ができますが、せっかくなので近くのキャンプ場でテントを張り、山旅気分を満喫するプランを組みました。
新幹線で福島駅についたら、高校生が待つ学校へ向かいます。目的地は福島市のシンボル信夫山の麓に位置する「県立福島高等学校」。部員の構成は3年生が引退した今、2年男子が7名、女子が4名、1年男子が3名、女子が5名という、けっこうな人数です。

「二日間、よろしくお願いします!」やや緊張気味に、でも元気よく挨拶をかわした後、部室を案内してもらいました。先輩から代々受け継いだ雑誌や山道具、ザックが並べられ、青春の香り漂う居心地のよい空間でした。その後、一行は、福島市から大型バスで約1時間の天栄村へ。羽鳥湖周辺の美しい高原や、湯治にも利用されている多くの名湯で知られる村です。
バスに揺られているうちに高校生たちの緊張もほぐれ、だんだんと賑やかになってきました。福島の未来を担う、若者たちの笑い声につつまれていると、それだけで元気をもらえるものです。

道の駅で地元食材をゲット!

昼食は、「道の駅・羽鳥湖高原」で、天栄村の特産品であるヤーコンを使った料理をいただきました。ヤーコンとは、レンコンのようなシャシャキとした食感とほのかな甘みをもつアンデス生まれの根菜です。道の駅のスタッフさんにヤーコンについての説明や調理法を伺うと、高校生たちは初めて見る野菜に興味深々の様子。「母ちゃんも食べたことないって言ってたし」と、ヤーコンを知らない高校生も多かったのです。さらには天栄村が誇るゴールドプレミアム米「天栄米」も入手し、本日の宿泊地「エンゼルフォレスト那須白河」へ移動しました。

おしゃれな名前のとおり、多種多様のコテージやオートキャンプ場、ガーデンスパ、レストランを擁するリゾート地で、私たちはセレブ感に若干、戸惑いつつも、顧問の先生の掛け声で一斉にテントの設営をはじめました。「こっち、引っ張るよー」と、手際よくテントを張る高校生たち。頼もしい!
設営後は、今回、ガイドとして同行いただく、橋本香織さんによる福島県レクチャー。貫田さんまで一緒にしばしお勉強をした後、再びバスに乗って羽鳥湖の湖畔にある羽鳥神社へと向かいました。

スポット情報

道の駅・羽鳥湖高原

住所:
天栄村大字田良尾字芝草1-3552
営業時間:
レストラン10:00~17:00/売店8:00~18:00

村の歴史を見てきた神社へ参拝

羽鳥神社は、地元ガイドの橋本さんが「ぜひとも見てもらいたい」と言っていたとおり、歴史を感じる社殿が厳かな雰囲気を漂わせ、いかにもパワーがありそうな隠れスポットです。灌漑用ダムのために羽鳥湖を造る時、湖の底に沈んでしまう前に高台に移した神社だそうで、移設からすでに60年たっていますが、もと村民の方々によって大切にされ、毎年10月には祭礼が行われるとのこと。国道脇から階段を上がっていく、訪れる人も少ない小さな神社ですが、全員で明日の安全を祈願し、キャンプ場へと戻りました。

スポット情報

羽鳥神社

住所:
岩瀬郡天栄村(羽鳥湖畔)

天栄ヤーコンのオンパレード。デザートは貴重なお話を

キャンプ場での夕食は山岳部恒例の料理コンテストです。3~4人一組のチームに分かれ、道の駅で購入したヤーコンと天栄米を使った料理を作り、その独創性を競います。ヤーコン入りシチューやヤーコン入りカレー、ヤーコン入りチヂミ、ヤーコン入り手作り餃子のスープなど、どのチームも凝った作品でした。接戦のすえ、優勝は半分に切ったトマトを2個並べて明日登る二岐山の双耳峰を表したヤーコン入りサラダとオムライス、雪ウサギをイメージしたパフェを作ったチームに決定しました。

食後には、山の大先輩である貫田さんから、20歳の時に初めてヨーロッパアルプスに行った話や、ヒマラヤのダウラギリで鶴のV字編隊が真上を飛んで行き感動した話、エベレストに登った時の印象的な出来事、などなど、世界の山の貴重なお話を聞かせてもらい、高校生たちは真剣なまなざしで聞き入っていました。

2日目 いざ、ブナと眺望と急坂の二岐山へ

偶然の出会いから始まる

翌朝、テントを撤収して登山の起点となる二岐温泉へ。まずは約1時間の林道歩きからスタート。ウォーミングアップを兼ねてのなだらかな道はワイワイと話しながら、実に楽しそうです。
しばらくすると、キノコ採りのおじさまに遭遇し、とったばかりのきのこを見せていただきました。「わー!大きい!」と高校生たちは大興奮。おじさまは「これから山のぼるのけ?わー、ご苦労なこった。きぃつけてな」と応援してくださいました。
この後もキノコ採りの方にたびたび会い、後で聞いた話では、地元では、キノコが多く採れる山、としても知られているようです。

やがて、左手に古い鳥居があり、御鍋神社の道標があったので立ち寄ることに。
樹齢520年のサワラの大木が2本一対あり、本殿にはご神体の大きなお鍋が下がっています。解説板によると、平将門の一族が戦いに敗れてこの地に逃れつき、朝廷から賜った鍋をご神体にして神社に祀ったと書かれてありました。
実は縁結びにもご利益がある、とガイドの橋本さんが話すと、女子たちの目がキラッと輝いておりました。

急登の先に広がるものは原生林

ようやく、山をあがっていく「御鍋神社登山口」につき、地図を確認して出発すると、いきなりの急登です。しかも、一旦なだらかに……、などと休むポイントはなく、登りに次ぐ登り。貫田さんと談笑しながら登っていた高校生たちも次第に無口になっていきました。

ミズナラやアスナロの木々の間を進んでいくと見事なアスナロの原生林がひろがったので、ここで、しばし休憩。アスナロの葉の見分け方や、「このアスナロはヒノキアスナロといい、二岐山が南限。自然林でここまで広範囲にあるのは全国的にも珍しい」との解説がありました。
隣の高校生に「けっこうキツイよね。疲れた?」と聞くと、汗を拭きながら「いいえ、大丈夫です!」とニッコリ。爽やかな秋の風がふわーと吹きぬけました。

その後もあいかわらず登りが続き、ふっさふさのコケやキノコの種類の多さに感激しながら進んでいくと、ブナの木々に囲まれる「ブナ平」に到着。実はこのブナの森、1970年代にブナの大規模伐採が行われたものの、地元の人々の反対運動で伐採を中止させたという歴史があるのです。おかげで、全国でも貴重なレベルの大規模なブナの原生林が残っているのだと、橋本さんが話すと「へぇー」と感心しながら上を見上げる高校生たち。黄金に色づいた葉が揺れ、私たちを歓迎しているようでした。

そういえば昨夜、世界の山を知る貫田さんが「日本の山は海外に比べて何がいいか、というと、滝や沢ですね。規模が違うと思います。あと僕が好きなのはブナ林。豊かなブナの森に魅力がある」とお話していたっけ。

お目当ての眺望は得られなかったものの、一瞬の奇跡が

その後、秋色の落ち葉を踏みしめながら歩けば目の前に山頂をとらえ、とどめの急登をやりすごしたら、やっと山頂です。正確には双耳峰のうちのひとつ、男岳。晴れていれば360度の眺望がひろがるのですが、残念ながら曇り空。晴れ間を待ちつつお昼休憩をとりました。
貫田さんとの雑談にも花が咲き、「行ってみたい国はどこ?」の質問に「サッカーにも興味あるのでドイツです」と答える男子と、昨夜作っておいた大学芋を分け合って食べる女子。思い思いに休憩をしていると、奇跡的にほんの一瞬、雲が薄くなり、小野岳や大戸岳、ふもとの谷をのぞむことができたのでした。

続いて、双耳峰のもうひとつ、女岳へと向かいます。一旦下り、また登って登頂。途中で猪苗代湖を望むことができ、歓声をあげる高校生も。女岳の山頂は眺望がないため、記念写真を撮ったらすぐに出発しました。
そのあとが衝撃です! 急にもほどがある、急な下りが待っていたのです。「地獄坂」の名前の通り、地獄の底まで落ちていきそうな急坂です。張られたロープを伝いながら下っていきますが、ズルッと滑って転倒してしまう人が続出。しかし、そのたびに、どっと笑いが起こり、そのうち、前方の女子グループからは歌声まで聞こえてきました。どうしたことでしょう。これはまさに、ハイ状態!

標高差600mを50分ほど一気に下り続けたら、まだ紅葉していないブナの森につつまれました。男岳のブナに比べたらまだまだ若い、細い木ですが、それでも樹齢70年くらいだそうで、みずみずしい葉の色がとても綺麗で、ほっと癒されます。
ここから間もなくで、ゴール地点の「女岳登山口」へ到着。

コースタイム

二岐温泉 - [1時間5分] - 御鍋神社登山口 - [1時間40分] - 男岳 - [20分] - 女岳 - [45分] - 女岳登山口 - [1時間] - 二岐温泉

二岐山の登山コース紹介や観光についての情報はこちらにも掲載しております

二岐山イメージ

中通りエリア

二岐山 ふたまたやま 1,544m

難易度:
中級
歩行時間:
4時間50分
おすすめ時期:
4月下旬~11月初旬

二岐山はふたつの丸みを帯びた双耳峰で、その特徴的な山容から「おっぱい山」とも言われています。双耳峰は福島には少なく、周りにあまり高い山もないため、見つけやすい山です。私は子供のころから…

写真:橋本香織さん

下山後は秘湯入浴で大満足

無事に下山したあとのご褒美はやっぱり温泉!お世話になった二岐温泉・柏屋旅館は、浴槽の底から温泉が湧き出る珍しい自噴泉をはじめ、5本の源泉をもつ宿です。
秘湯感たっぷりの温泉で、酷使した足の筋肉を存分にいたわりました。

ふたたびバスに乗り、学校まで戻る時、「結構キツかったね。キツイからなんか知らんけど笑っちゃった。あ~車がありがたい」と高校生たちが言っていたのを私は聞き逃しませんでしたぞ。
貫田さんはというと、福島駅で「皆さん、世界の山でまた会いましょう!」と、颯爽とバスを降りていきました。

スポット情報

柏屋旅館

住所:
天栄村二岐温泉
日帰り入浴:
10:00~13:00(入浴料 大人800円 小学生500円)
URL:
柏屋旅館

登山を終えて

2年 海老名帆夏さん
急登すごい!でも時間は短かったと思いました。今までで10番目にキツイ(笑)山です。それと、地獄坂がこれまでにないほど大変で、スキルアップに役立ちました。

2年 吉田悠人くん
ダンゼン良かったのはキノコがたくさん見られたことです!
3、4、5、いや10種類以上ですかね、こんなにたくさんの種類をみられるなんて、こんな経験ないですから。

2年 梅津悠ららさん
思ってたより急でした。今まで登った山は急となだらかがハッキリしてたので、あ、次、急だな、と構えられるのですが、この山はずっと急。でも、楽しくしゃべりながら歩けたので充実の山登りができました。

2年 緑川颯くん
いつもは、登山大会などで黙々と登ることが多いのですが、今回は植生の説明をしていただけたり、見知らぬ人(登山中に会った人)と年齢を超えて話ができたので楽しかったです。

2年 島田尚さん
二岐山は登りやすく、景色がきれいだと思いました。今回の登山で改めて山が好きになりました。今度は会津地方の山に登ってみたいです。

2年 影山郁洋くん
御鍋神社がいちばん印象的でした。樹齢520年の木があって長年生きている、力強い生命力を感じました。それと、地獄坂が大変でした。

1年 中里香奈さん
とても景色がきれいでゆったりと登山でき、楽しく、リラックスできました。また、二岐山で自然に触れ、ふるさとの山に興味がわきました。

1年 渡部勇斗くん
高校入ってから登山を始めたので、まだ5山目なのですが、道が短くて、その分、急だったのが面白かったです。それと、途中にきのこがたくさんあったのも良かったです。

貫田宗男さん

登山家 貫田宗男さんからもひとこと

日曜日だというのに登山者も少なく、静かな山登りが楽しめました。現役時代は谷川岳や穂高岳で岩登りばかりしていたので、ブナ林の原生林はとてもリラックスできました。登山後の温泉も最高でした。
そして、高校生のみなさん、工夫された夕食はどれもおいしかったですよ。山との接点は美味しいキャンプ食でも登頂の充足感でもなんでも構わないと思います。自然はたくさんのことを教えてくれます。これからも山登りを楽しんでください。

お立ち寄りスポット

エンゼルフォレスト那須白河

天然温泉とガーデンスパ&屋内プール、アウトドアアクティビティを楽しめる複合レジャー施設。電源付きのオートキャンプサイトやグランピングサイト、コテージなどを備え、好みに合わせて宿泊スタイルを選べる。全面ガラス張りの眺めのよいレストランで地産地消の食材を味わえる豪華バイキングが好評。

エンゼルフォレスト那須白河外観

羽鳥湖

周囲16km、総貯水量2700万立方メートルの人造湖で、全国ダム湖百選に選ばれている。湖畔に遊歩道があり、吊り橋の先の広場では湖を一望できる。4月から10月は貸しボートに乗って新緑や紅葉を湖上から楽しむことも。

羽鳥湖イメージ

スポットマップ

周辺スポット

コース中に登場しているスポットのおさらい

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