浅草駅から会津田島駅までは、直通で約3時間15分。2017年4月に開通した東武鉄道の新型特急「リバティ」に乗って、のんびりと向かいます。ふかふかで座り心地のいいシートに腰かけ、のどかな景観へと移り変わっていく様子を車窓から楽しむのも、旅の醍醐味!
会津田島駅を下車したら会津若松行きのリレー号に乗り換え、まず目指す先は「塔のへつり駅」。
さぁ、旅のはじまりです!
百万年の長い年月をかけて浸食と風化を繰り返し、このような奇岩・怪石がそそり立つ景観ができたという「塔のへつり」。まさに、自然の神秘。この景色を最初に見つけた人はさぞ驚いただろうなぁと思いを馳せつつ、まぶしい新緑とともに渓谷美を楽しみます。スーッと鼻から息を吸うと、新鮮な空気でからだじゅうが満たされていって、ん~、気持ちいい!
ちなみに“へつり”とは、断崖・絶壁などを意味する方言だそう。
塔のへつりからタクシーで約20分。「大内宿(おおうちじゅく)」に到着です。
江戸時代、日光と会津若松を結ぶ全長130kmの会津西街道の宿場町として栄えた大内宿。幕府が大名統制策の一つとして行なった参勤交代により、各藩の藩主や無名の旅人たちがここで旅の疲れを癒していったそう。
その後、制度の廃止や大きな街道ができたことで活気を無くしつつあった大内宿ですが、とある青年の訴えのおかげで、400年以上経った今も古き良き趣ある姿を残しています。
会津の殿様を唸らせたという、「高遠(たかとお)そば」。大根おろしを入れた出汁にお蕎麦をつけて、薬味の長ネギをお箸代わりするのが大内宿流の食べ方。さっぱりと美味しくて、何杯でもいけちゃいそう!
食後は、辺りをぶらっと散策。山に囲まれたのどかな景観に、心身ともに癒されていくのを感じます。
大内宿には今も3軒の民宿が残り、今回やってきたのは、築300年の蔵に泊まることができる「本家扇家」。静かな家屋には囲炉裏のスモーキーな香りが漂い、まるではるか昔にタイムスリップした気分。
かつて旅人たちがここで疲れを癒したように、わたしも明日の小野岳登山に備え、羽根を存分に伸ばすことに。
居心地のよさはもちろんですが、女将さんの手作り料理がまた素晴らしく。貝柱で出汁を取った「こづゆ」や、「イカにんじん」、「にしんの山椒漬け」や「馬刺し」など、会津地方の郷土料理がたくさん。大満腹です!
朝日を浴びて輝く大内宿をあとにし、大内登山口へ向かいます。登山口へは車道を歩いて20分。そこから30分ほどなだらかな樹林帯を進み、その後はグイグイ登って、グングン標高を稼いでいきます。
山頂までの標高差はおよそ660m。登り道はキツイけれど、ときおり射し込むこもれびがとっても美しい! 息を整えながら、山頂をめざして進んでいきます。
歩き始めて1時間。標高を上げるにつれて、スギに代わってブナやミズナラといった落葉広葉樹が目につきます。幹の下部が湾曲している様子は「根曲がり」と呼ばれ、ブナが深く重たい雪に耐えしのいでいる証拠。豪雪にも負けないその姿を見ていると、生命の力強さを感じます。パワーをもらって、山頂までもうひと踏ん張り!
歩き始めて2時間、標高1,383mの小野岳のてっぺんに到着です!
山頂には小さな石祠があり、目前に大戸岳、北側に飯豊連峰や吾妻連峰、磐梯山といった東北の名峰を眺めることができます。涼しい風を浴びながら、腰を下ろしてひと休憩。スケールの大きい景観を前に、心がホッと和らぐ瞬間です。
小野岳の登山コース紹介や観光についての情報はこちらにも掲載しております
会津エリア
小野登山口に下山し、小野観音を経て徒歩20分ほどで「湯野上温泉」へ。下山途中、眼下に温泉街が見えてきます。国道まで下ると、背後にはさっきまで登っていた小野岳がどーんと鎮座。圧巻の光景です。
清らかな大川渓谷を眺めながら、涼を感じる露天風呂で汗を洗い流して、からだも気分もサッパリ。入浴後は、おいしいお昼ごはんを求めて会津若松方面に向かいます。
湯野上温泉駅から会津鉄道に乗って30分、七日町駅へ。七日町エリアは、駅前の道路沿いにレトロな町並みが続き、観光を楽しみながら会津若松駅まで歩いて向かうことができます。
ということで、気になるお店を見つけては訪ね、食べ…を繰り返し、のんびり気ままにぶら~りお散歩。登山後のお楽しみが大充実で、ほっぺも胃袋も緩みっぱなしです!
130年続く老舗和菓子処。温泉水から得られる会津の“山塩”を使った「プレミアム生どら焼き」(200円)は絶品。登山で消費した塩分をほどよく摂取できます。ほかにもお団子やお饅頭など、甘味が充実。
会津若松市七日町5-17
9:00~17:30(不定休)
熊野屋
真空管のオリジナルアンプやスピーカーが所狭しと並び、軽快なジャズが流れる店内。ここで頂いたのは、会津のB級グルメ「カレー焼きそば」(600円)。店主お手製のピリっと辛いカレーに麺と野菜がからみ、箸がどんどん進みます。
会津若松市七日町9-2
9:00~20:00
400年以上も続く会津伝統の「会津塗」を使用した、オリジナルデザインの漆器やアクセサリーを販売。これまでに見たことのなかったデザイン性の高い漆器が数多く並び、独自の世界観が広がっています。蔵を改装して作ったという店内も素敵です。
会津若松市大町1丁目4-51
坂本これくしょん
創業230年の漆器屋が営む、ショップ&カフェ。ケーキやコーヒーは漆器で提供してくれるので、美しい器を眺めながら、おいしいひと時を味わえます。店内の雰囲気もレトロで素敵。写真は、「本日のスイーツセット 水出しコーヒー付き」620円。
会津若松市大町1-3-51
11:00~17:00
あんてぃーくカフェ中の蔵
会津の歴史を見て、触れて、山を歩いて天然温泉に浸かり、おいしい名物をたらふく食べた2日間。会津の魅力を“自分の足”でたくさん知って、深く学ぶことができました。
東武鉄道の「特急リバティ」の開通により、関東から格段とアクセスしやすくなった会津エリア。ぜひ小野岳の登山とセットで訪れてみてはいかがでしょうか?あらゆる角度から会津を味わうことができますよ。
昭和56年に大内宿が「重要伝統的建物群保存地区」に指定を受けてから、徐々に訪れてくれるお客さんが増えました。そしたら、「ここに宿があればいいのになぁ」というお客さんの声があって。で、自分でもここに宿があれば流行るなぁという実感があったので、お姑さんたちに「民宿をやりたい!」って何度も説得をして、昭和58年に民宿営業の許可を取り、平成元年から営業をはじめました。
昔は十何軒あった民宿も、今はうちを含めて3軒。民宿って、人や料理や掃除が好きじゃないとできないでしょう。だからみんな辞めて食堂とかお土産屋さんはじめたりしてね。
おらはね、民宿が性に合ってたの。人が好きなのよ。料理作って「うんまいなぁ」って喜ぶ顔とか、色々な話を聞くのが大好きなの。だから、ここを実家だと思ってまた来てもらえるような宿にしたくて。日本全国のおふくろになりたくて、この宿ははじまったんです。
今日のメニューは、馬刺しのからし味噌、タケノコまんじゅう、ニシンの山椒漬け、イカニンジン、ワラビのお浸し、フキの油炒め、イワナの燻製焼き、こづゆ、エゴマうどんなど。お米は、うちで作っている「秋田こまち」で、フキやワラビといった山菜は、みんなここで採れたものです。
作り方は昔からの伝統の引継ぎで、お姑さんに教えてもらって。フキは“小糠”を入れて茹でるとアクが抜けて色もよくなります。ここで採れたものをうまく料理して保存して、おいしく食べる。街ではおいしい料理がたーくさんあるでしょう。だから、ここでしか食べられない料理を食べてもらいたい。 秋はきのこ料理、冬はあったかい鍋料理を出したりね。“ならぬ事はならぬ、会津魂”と言って、いつまでもお客様を飽きさせないように、「大内宿はいいよなぁ、何度来てもいいよなぁ」って思ってもらえるように、毎日心を込めて作っています。