> ニュース&トピックス > 2020.03.24(火) 16:00 淑徳大学が福島県の沿岸部でスタディツアーを実施。震災学習を行いました。
[日程]
令和2年2月12日~2月14日(2泊3日)
[学校名・学年・人数]
淑徳大学 総合福祉学部、コミュニティ政策学部、人文学部 1・2学年 6名
[来県市町村]
1日目 相馬市
2日目 南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町
3日目 いわき市
[本県を訪れた目的]
「できることを、いま・ここから」をスローガンに、東日本大震災の復興支援活動を続けており、このツアーは、3.11を風化させることのないよう現地に赴き、被災された方々のお話を直接伺って交流することにより、「いまできることは何か」を考え支援につなげていくことを目的としています。今年度は福島県の双相地域にて、震災・津波被害ならびに原発事故被害からの復興支援について考えました。
[取材日]
令和2年2月12日~13日
※3日間の日程の中で、2日間に渡り密着取材した内容をご紹介いたします。
[取材内容]
〇1日目(相馬市)
・相馬市伝承鎮魂祈念館
震災当時、津波でご家族を亡くされ、ご自身は九死に一生を得た経験を持つ、五十嵐ひで子さんの震災講話では、津波発生時の混乱した周囲の状況やすぐに逃げる判断ができなかったことへの後悔など辛い経験を乗り越え、現在は、亡くなられた方々の供養と震災を風化させないために、語り部として活動し続けている話を聴きました。五十嵐さんの想像を絶する体験談に涙を流しながら講話を聴く学生も見受けられました。
「自分の命は自分で守る」。五十嵐さんの強い想いが込められたメッセージは、学生の心に深く刻まれました。
・福島県相馬港湾建設事務所
同施設では、職員による東日本大震災と港の復旧・復興について説明を受けました。
相馬港は地震直後、約10.36mの津波に襲われ、沖防波堤が倒れるなどの大きな被害を受けましたが、現在は液化天然ガスによる発電所などの震災後新たな企業が建設され、復興へ向け前進する相馬市の姿を学びました。その後、海抜20mある事務所の屋上へ移動し、防災緑地や津波の避難場所などを眺めながら説明を受け、特に緊急時の停電や断水に対応する自家発電の機能や、貯水タンクが備えられていることの説明では防災レベルの高さに関心を寄せていました。
・相馬市防災備蓄倉庫
倉庫には、1万人が3日間過ごせる量の水と食糧が備蓄されており、昨年10月に発生した台風19号の災害時も活用されました。構内の一角には、東日本大震災の際に応援に駆けつけてくれた、日本中の市町村名が刻まれたパネルが飾られており、その中には、同校の所在県でもある千葉県流山市のパネルも掲示されていました。市の担当者からの「支援いただいた市町村は必ず記録し、何か災害が起こった際は真っ先に駆け付け恩返しをします」という助け合いの精神に、学生たちは心を動かされていました。
・夕顔観音堂
夕顔観音堂へ向けて階段を上ると、夕日に照らされて輝く松川浦、そして大洲海岸が広がる絶景を望むことができました。松川浦は津波で大きな被害を受けましたが、復旧が進み、以前の美しい風景に戻りつつあります。参加者は景色に感動し、鵜ノ尾崎灯台に向かって更に階段を昇っていきました。「震災前は漁業が盛んで賑やかなところであったが、現在はまだ試験操業中で、当たり前の生活がいかに魅力的であったか再認識している」と相馬市観光協会のガイドさんの言葉を胸に留め、ツアーの1日目が終了しました。
その夜は1日目の振り返りが行われ、学生同士で感想を共有し、翌日からの学習の参考にしていました。
〇2日目(南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町)
・南相馬市小高生涯学習センター
安部所長から、震災時の南相馬市の現状と今後の課題について講話がありました。復興とはインフラ・産業・コミュニティの三つの再生だという話があり、今後復興に向けて解決すべき課題を考えるきっかけとなりました。「緊急時にはまず自分のことを考えること。次に隣の人同士で助け合うことが大切」と話があり学生たちはうなずきながらメモをとっていました。
・浪江町から富岡町にかけてフィールドワーク研修
一般社団法人AFWの吉川代表理事のアテンドで、初めに浪江町請戸地区を見学。津波発生時いち早く避難し、全員が助かった請戸小学校を目の前に、「津波が起こったらまず自分の身を守ってほしい」と話し、更に「震災について語ってくれた方たちのお話を、ギフトとして受け取り、意味あるものとして周囲の人に伝えてほしい」と呼びかけました。
・国道6号
途中通過する帰還困難区域内の家屋の入口にはバリケードが設置されており、学生たちは車窓から、震災当時のままの光景を目に焼き付けていました。
・双葉ふれあい広場
双葉町のジオラマを見ながら、震災前の町の様子について説明があり、「双葉町は人と人の距離が近い魅力的な町。被災地という言葉でまとめずに、人に伝える際は『双葉町に行った』と言ってほしい。人や町にフィーチャーすることが大切」と吉川さんは話しました。
・大熊町役場周辺
避難指示が解除された大熊町大川原地区に新設された町役場の付近には、復興公営住宅が建ち並び、着実に前へ進む町の変化を感じることができます。吉川さんは「双葉郡を見ていると、自分がどんな場所で生きていきたいか考えるきっかけになる。地域を見て、現状を知って、感じたことを持ち帰って、考え続けてほしい。」と呼びかけました。
・富岡消防署楢葉分署
同校の卒業生である笹田丞警防係長の講話では、震災当時、原発事故をいち早く収束するために尽力した当時の話を真剣な顔つきで語りました。震災当時は刻々と変化する状況と、情報不足で混乱する現場、体感したことのない不安の中、人々のために過酷な現場に繰り出したことなど、未曾有の出来事を前にふるさとを守りたい一心で活動していた当時のお話は、参加者の胸を打ちました。
〇2日間のツアーの感想
[学生のコメント①]
「東日本大震災については、新聞記事などで知ることができるが、文面から想像できることには限界がある。福島に来て、実際に震災を経験された方の生の声を聞くことができて、貴重な経験になった。相馬市の防災意識の高さには感銘を受けた。自分も、家族で緊急時に取るべき行動を話し合うなど、今回得た経験を防災に活かしていきたい。」
(2年 女子学生)
[学生のコメント②]
「福島県は来てみると、思ったよりインフラや防潮堤などが整備されていて、自分の目で見てこそわかることがあると知った。今回お話しくださった皆さんが、共通して『自分の命は自分で守る』ことを伝えていて印象に残った。地元に帰ったら、飲み水の確保や給水用ポリタンクの準備など、緊急時に備えたい。」
(2年 男子学生)
[先生のコメント]
「今回のツアーを通じて、震災の教訓を生かし復興に向け力強く取り組む方々から多くのことを学ばせていただいた。特に、日常を大切に生きること、自分のふるさとを大切にすること、そして防災意識を高め、いざというときのために備えることの大切さを学び、学生たちはこれからの自分のあり方を深く考えてくれたように思う。『命の大切さ』という言葉はよく耳にするが、現地を見て、震災を経験された方の話を実際に聞くことで、改めて実感することができたのではないだろうか。学ばせていただいた福島の地を忘れることなく、よりよい明日に向かって、共に未来を築く人になってくれることを期待したい。」
(小林秀樹先生)
◎相馬市伝承鎮魂祈念館
https://www.tif.ne.jp/kyoiku/program/disp.html?id=530
◎福島県相馬港湾建設事務所
https://www.tif.ne.jp/kyoiku/program/disp.html?id=534
◎相馬市防災備蓄倉庫
https://www.tif.ne.jp/kyoiku/program/disp.html?id=531
◎一般社団法人AFW
https://www.tif.ne.jp/kyoiku/program/disp.html?id=548
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