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2024.02.07(水) 09:28 取材記事(教育旅行)千葉県・市川高等学校の有志メンバーがふくしま学宿を実施しました

おれたちの伝承館

対話[原発・廃炉分野]

対話[水産分野]

振り返りのワークショップ

[日程]令和5年12月17日~19日(2泊3日)
※12月17日と19日の行程を取材させていただきました。
12月17日 東日本大震災・原子力災害伝承館見学、おれたちの伝承館見学、対話[原発・廃炉分野/(一社)AFW吉川彰浩代表]
12月18日 双葉町・浪江町フィールドワーク、対話[原発・廃炉分野/東京電力職員]、楢葉遠隔技術開発センター見学、対話[地域づくり/(一社)葛力創造舎下枝浩徳代表理事]
12月19日 ワンダーファーム見学、対話[水産分野/福島県漁業協同組合連合会]、まとめのワークショップ

[学校名・学年・人数]
市川高等学校 有志メンバー 1年生 30名

[取材内容]
 市川高等学校は2017年に福島県教育旅行モニターツアーを実施してから、毎年ふくしま学宿を行っています。ふくしま学宿は、ホープツーリズムの3つの要素である「見る・聞く・考える」を組み入れた内容で、今年も1年生30名が参加しました。
 ふくしま学宿のスタートに行われたガイダンスでは、フィールドパートナーの佐藤成美さんが、震災で浜通りが受けた被害について説明し、佐藤さんから「ここで起こったことはどこでも起こりうること。この3日間は自分が感じたことを大事にしてほしい」という思いを聞きました。
 初日と2日目は、「東日本大震災・原子力災害伝承館」や、「双葉町・浪江町のフィールドワーク」のほか、福島第一原子力発電所の廃炉推進のための遠隔技術開発の拠点である「楢葉遠隔技術開発センター」や、アートの視点から震災を考える「おれたちの伝承館」を訪れました。生徒の皆さんは、施設の各展示物にまつわるエピソードを熱心に聞いたり、持参した学びノートに感じたことを書き留めていました。さらに3日間を通して、さまざまな分野で活躍する「復興に向け果敢にチャレンジする人々」との対話を通し、多様な視点から復興に向けた取り組みや課題を学び理解を深めました。最終日は、振り返りのワークショップを行い、ツアー3日間の気づきを各自で整理し、「考え続けていきたいこと」「これから行動に移していきたいこと」をグループごとに発表。「無知の恐ろしさについて知る」「自分の意見を持ち、人に伝える努力をする」など、3日間のツアーで学び、考えたことを全員で共有しました。

[生徒のコメント①]
 「僕は、東日本大震災のときは3歳で記憶もないのですが、中学生のときにテレビや新聞等で大震災の悲惨さを実感し、福島と千葉、それほど距離が離れていない所で起きた悲惨な事故なのに、こんなにも自分は何も知らないんだと思ってから福島に関して調べる活動をしています。中学1年生から3回ほど福島を訪れました。もちろん福島に行かなくても、廃炉をどのように進めているか、震災からの復興はどのように行われているかは、ニュースで分かると思いますが、僕はこの学宿で、福島にいる人にしか分からない考えをはじめ、復興に対する思いや、原発に対する考えを知ることができたと思いました。今まで僕が行ったことがある伝承館は事実を伝える場所という印象でしたが、おれたちの伝承館はそうではなくて、原発事故だったり、震災を感じた人しか伝えられないような感情や命など、客観的ではないけれど、私たちの生活にとって重要なことがアートを通じてよく分かりました。僕は高校1年生のときに復興について調べて、そのときは経済的な側面について主に触れて、倫理や生命については全く触れなかった。今回吉川さんの話を聞いて、おれたちの伝承館と同じように、通常の生活が送れるというだけで、かつてのように経済的に発展していなくても、幸せな生活が送れるというだけでそれは復興と言えるんだと思いました。」
(1年 増澤 孝太さん)

[生徒のコメント②]
 「東日本大震災の被害はニュースで見るけど、実際にはよく知らないことも多く、ニュースで見るだけじゃない何かを得られたらいいなと思い参加しました。2日目は、請戸小学校を訪問したのですが、もう原型が想像できないぐらい凄惨に破壊されていて、本当にここで子どもたちが過ごしていたのかなと思うぐらい、すごく凄惨な現場だと思いました。最終日は、トマト栽培で地域を支えるワンダーファームと、福島県の漁連の齋藤さんと小泉さんにお話を聞いたのですが、どちらも後継者の問題に言及されていました。第一次産業は日本で暮らしている人の生活基盤を支える産業で絶対にないといけないものなのに、後継者もいないし、高齢化が進んでいるということをお二方ともおっしゃっていたのが印象に残りました。この学宿に参加する前は、自分とはあまり関係ないし、遠い出来事だったので、復興はいつまでかかるのかなって遠くから見ている感じだったのですが、参加して自分が過ごしてきた時間軸と同じ時間軸でこの土地も変化していて、震災前の姿に戻るというか、それ以上になれるように、皆さん、一日一日を頑張って過ごされているというのが身に染みて感じました。漁連の方が風評被害はなぜ起きるかという話をされましたが、何も知らないから、疑念が生まれて広まっていってしまうというのを聞いてすごく腑に落ちました。何かのきっかけで福島の話になったときに、今回の学宿で学んだことを、ちょっとでも誰かに伝えられたらいいなって思います。」
(1年 川 惺香さん)

[先生のコメント]
 「フィールドパートナーの佐藤成美さんは、車中やいろいろなところでお話をされているなかで、彼女が何かの方向に導くということはしないというのを一番に感じました。例えば『こういうものがありました、あなたたちはどう思いますか』という、すごくオープンな形で問い掛けをしてもらいました。普通はある方向に導かれると思うのですが、彼女がいたことによって、いろんな方向に自由に考えを広げられたという意味で本当にありがたい存在だったと思います。施設見学や対話では、一つの視点からではなく、いろいろな視点から話を聞かせていただきました。東日本大震災・原子力災害伝承館に行った後に、それとはまた違った視点のおれたちの伝承館へ行き、夜には吉川さんとの対話がありました。こんなに見方があるんだと、生徒は頭がぐるぐるしておそらく答えは出ていないと思います。だけどいろいろな視点から物事は見なければいけないし、そこに何がいいとか悪いとかは多分ないんだろうということに気付きがあったのではないかと思います。まず忘れてはいけないのが現在進行形で被害に遭われている方、苦しんでいる方がいて、復興もまだ道半ばだということを知るのが一つ。もう一つは将来復興に携わっていくかもしれないということ。直接的、間接的に何かの技術開発に少しでも携わるとか、そういう将来に向けたきっかけにもなる。今回のふくしま学宿には、二つの意味があるのではないかと思いました。」
(市川学園市川高等学校 中野 靖之先生)

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