> ニュース&トピックス > 2020.12.21(月) 09:24 いわきヘリテージツーリズムで学ぶ近代産業とエネルギー
■ヘリテージツーリズムとは
ヘリテージツーリズムとは、文化遺産や自然遺産、産業遺産を観光資源として利用することを指します。ここではいわきヘリテージツーリズムに焦点を当てて、「産業遺産に訪れて見学し、地元住民や元従業員等との対話を通し、産業技術やその産業に係る生活・文化を学び、未来を考える旅」をヘリテージツーリズムと定義しています。
産業というと最新技術が注目されがちですが、元をたどると原点となる技術や産業があったからこそ、現在の産業が存在します。日本の近代化、経済発展の礎となった産業の足跡をたどることで当時から現在までの地域性や歴史・生活・文化を学び、未来を考えるきっかけになります。
■いわき市と炭鉱の歴史
いわき市の北に位置する富岡町から茨城県北部まで広がる常磐炭田は、北海道の石狩、福岡県の筑豊炭田に次ぐ大きさで、本州最大の炭田でした。1951年の最盛期には、いわき域内83の炭坑で約2万3千人が働き、年間274万トンもの石炭が採掘されました。
1857年の採炭開始から、1976年の常磐炭砿西部砿業所が閉山するまで約120年、いわき市は東京に最も近い炭田として日本の経済を支えていました。
■いわきヘリテージツーリズムとは
現在のいわき市には炭坑跡や選炭工場跡、採炭時に出た不要な石を捨てて出来た人工山「ズリ山」等が残り、石炭を運ぶために引かれた専用鉄道橋梁も当時の姿をとどめています。私有地や、無断立入禁止の場所もあるため、「いわきヘリテージ・ツーリズム協議会」のガイドにより、見学が可能です。また、「いわき市石炭・化石館ほるる」や「みろく沢炭鉱資料館」では当時の生活や労働環境、文化を学ぶことができます。
■石炭の今
産業革命により、日本でも1872年に蒸気機関を原動力とした富岡製糸場の操業が始まるなど、火力発電所や蒸気機関の燃料として石炭が大量に消費されるようになりましたが、1960年代頃のエネルギー革命によって、安価でより扱いやすい石油へエネルギーの主役が切り替わると、暖房や風呂焚きなど日本人の暮らしから石炭は姿を消しました。
しかし、日本で石炭が消費されなくなったわけではありません。
日本では2019年度、1億1,003万トンもの石炭を輸入しています。経済成長とともにエネルギー消費量が増加し、主に火力発電に利用される石炭の消費量も同じく増加しました。
近年、再生可能エネルギーの発電割合が増加していますが、日本の全発電量のうち27.8%は石炭火力発電によるものです。日本の石炭火力発電は発電効率が世界トップレベルであるものの、石炭は石油や液化天然ガスと比較して二酸化炭素の排出量が多く、地球温暖化の原因のひとつとなっています。環境負荷を抑えるためにはさらなる発電の高効率化を図り、石炭消費量を減らす必要があります。
この機会に石炭について学び、エネルギーの未来を考えてみてはいかがでしょうか。
■関連施設
○いわき市石炭・化石館「ほるる」
模擬坑道があり、当時の採掘の様子や、生活の様子などを見学することができます。
https://www.tif.ne.jp/kyoiku/program/disp.html?id=407
○スパリゾートハワイアンズ 2階「フラ・ミュージアム」
炭鉱夫やその家族を雇用へ結びつけるために誕生した常磐ハワイアンセンター(現在のスパリゾートハワイアンズ)。観光業への産業転換に成功し、現在もいわき市の観光の中心地として地域を支えているハワイアインズの「フラ・ミュージアム」には、常磐炭田の歴史や、常磐ハワイアンセンター誕生とフラガールの歴史、映画「フラガール」の衣装なども展示されています。
https://www.hawaiians.co.jp/show/hulamuseum.html
■関連サイト
○いわきヘリテージツーリズム協議会
https://www.i-heritage.com/
○内郷まちづくり市民会議「うちごうまちあるきマップ」
http://uchigo-machiaruki.jp/
○いわきの「いごき」を伝えるウェブマガジンigoku
「人は何をつくるのか」(みろく沢炭鉱資料館 館長 渡辺為雄さん)
https://igoku.jp/hito-4253/
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