福島県観光物産交流協会の方々と初めてお会いしたのは、震災から半年ほど経った2011年10月27日でした。くしくもちょうどその1年後の同日に、東北最大級のバイクイベント「ライダーズPIT in ふくしまスカイパーク」を共催することになるのですが、そのときはまだ夢想だにしておりません。
わざわざ弊社まで足を運んでくださった、協会担当者の切迫した表情がいまだに忘れられません……。風評被害で大打撃を被った福島県の窮状を訴えるその姿には、現地で苦しんでいるであろう県民の方々の思いがオーバーラップしていました。力を貸してほしい、助けてほしい——そう迫られて、正直どうしていいかわからず、返答に窮したことが昨日のことのように思い出されます。
バイク乗りの皆さんに福島ツーリングをしてもらいたい——そんな切実な要望にこたえるには、どうすれば一番いいのだろう? 当時、モーターサイクリスト誌の編集人だった僕は思案に暮れました。とりあえず観光ガイド的なページをつくるとして、ほかに何か……? 日々の業務に忙殺されながら、ふと思い出しては考えてみるもののなかなか妙案が浮かばず、時は流れていきました。
明けて2012年。モーターサイクリストは創刊60周年を迎え、編集部は例年以上に多忙を極めていました。アニバーサリー企画が毎月のように誌面を飾り、いつしか半年が経過。仕事に追われていることを口実に思考停止してしまっている自分、そして、それを恥ずかしく思うもう1人の自分……。その葛藤が解消に向かうきっかけとなったのは、6月17日に南会津で開催された「南郷ひめさゆりバイクミーティング」です。地元のバイク乗りの有志が中心となって企画されたこのイベントは、“手作り感”あふれるものでした。メーカーのブースが軒を連ねるわけでもなく、派手な演出があるわけでもないのに、集ったライダーたちは心底楽しんでいることがわかりました。小雨がぱらつくあいにくの天気にもかかわらず、300台近くが来場した光景を目の当たりにして、僕は考えを改めることにしました。福島の復興支援には、やはりミーティングイベントがいい、と。
小誌創刊60周年にあたる2012年は、じつはそれまで定期的に行なっていた読者ミーティング系イベントを封印した年でした。毎号のコンテンツ充実のためです。手間暇のかかる行事はあえていったんやめ、代わりに中身の濃い誌面をお届けすることで読者への謝恩とする方針で動いておりました。それを白紙に戻し、60周年記念の読者感謝祭という意味合いも持たせた、一大イベントを開く方向へ急きょ舵を切ることになりました。
とはいえ、編集部だけでやれることには限界があります。社内他部署のコンセンサスを得て、弊社が主催する形にする必要がありました。実際のところ、社内での調整を経て具体的に動き出したのは8月に入ってから。10月に開催するにはあまりにも時間がありませんでしたが、協賛していただいたスポンサーの方々をはじめ、関係各位のご尽力により、福島応援イベント「ライダーズPIT in ふくしまスカイパーク」は無事オープンまで漕ぎ着け、しかも大成功を収めることができたのです。
1人ひとりの力はちっぽけなものでも、ひとたびベクトルがそろえば、そのパワーは幾何級数的に増大する——そんな現象を改めて垣間見た催しでした。その相乗効果はなにもイベントだけが持っているとは限らないでしょう。思い立ったが吉日とばかりにライダーが個々別々に福島を訪れても、その数が増えれば波及効果が生まれます。同じ日に同じ場所で何かをすることのほかにも、やるべきことはあると思います。
福島ツーリングの季節はいつでしょうか? 春? 夏? それとも秋!? 冬はまあ、クルマで行くとして、いつでしょう?
それは、福島を応援したいと思ったそのときです。ベストシーズンは皆さんの心のなかにあります。
(2013年4月現在)