美を醸すふくしま 本来のキレイに還ろう。

発酵菌は、生命体。

たとえば、麹。
味噌や醤油、清酒や甘酒のもとになる麹をつくる種麹。
これら1gには数億以上の麹菌が生きている。

発酵菌があるがままに生きることで、
食材の旨味が引き出され、香りが醸し出され、
人のカラダにとっても良い成分をつくり出し、美容と健康のサポートをしてくれる。

「会津」・「中通り」・「浜通り」。
気候や地形が異なる3つの地域をもつ福島県。
山、川、海。そして、水。
それぞれの風土と自然の恵みのなかで、じっくり時間をかけながら、
人と菌とともに醸してきた発酵文化。

福島が誇る「三五八漬け」。
会津の「にしんの山椒漬け」や「ひしょ納豆」。
中通りの「いかにんじん」や「紅葉漬け」。
浜通りの「さんまのみりん干し」や「切腹南蛮」。

食も旅も、ここに息づく生命体とともに。

福島をめぐると、人間の細胞がよろこび、元気になる。
心にも体にも、ゆるやかな調和が広がる。
本来のパワーが目覚め、人間の内なる美しさが醸し出されていく。

KNOWLEDGE 発酵の基本

発酵について

食卓になくてはならない発酵食品。発酵とは、乳酸菌や麹菌、酵母などの微生物が野菜や穀物、乳や肉類などの原料を分解しながら生育することで有効な成分をつくり、貯蔵性を高めたり、人々に健康をもたらしたり、おいしい食品へと変化させたりする力のことを言います。
食品に微生物が増える現象のなかでも、人にとって有害なものは「腐敗」、安全性が保たれ有益に働くものを「発酵」と区別します。
発酵食品には、腸内環境の改善や活性酸素の働きを消去する抗酸化作用などの身体を健康に保つ健康機能改善効果があります。近年の研究では、発酵食品には免疫を高めたり、骨を丈夫にしたりする健康機能改善効果もあることもわかってきました。

微生物について

食品をより美味しくする発酵の力。この発酵を促すのは、発酵微生物である、「カビ類」「酵母類」「細菌類」といった微生物です。カビの胞子も酵母も細菌も、そのサイズは10マイクロメートル。つまり1mmの100分の1の大きさと非常に小さく目に見えません。これら目に見えない微生物が働くことによって発酵食品がつくられます。

カビ類

カビは、生殖細胞である胞子が糸状の細胞(菌糸)を伸ばして成長する菌類の仲間です。キノコなどもこの仲間で、有毒なものもある一方、発酵に使われるカビには毒がありません。味噌や醤油、酒などをつくり出す「麹菌」も実はカビの一種です。ブルーチーズで知られる「青カビ」の他、かつお節をつくる際にも意図的に「カツオブシカビ」を付着させるという方法がとられてきました。

酵母類

酵母は、パンや酒をつくるときに欠かせない単細胞の微生物です。カビと同じ仲間に分類され、パンや酒を作る酵母は、細胞の一部がふくらみ「出芽」することにより増殖します。酵母は糖を分解し、アルコールと二酸化炭素を生み出します。酒をつくる酵母には、酒の種類により「ビール酵母」、「ワイン酵母」、「清酒酵母」などがあります。なお、パンづくりに使われる酵母は、パンづくりのために馴養(じゅんよう)された「イースト」と、穀物や果物など自然界に存在する「天然酵母」があります。

細菌類

食品を発酵させる細菌は、ヨーグルトやキムチの「乳酸菌」、大豆を発酵させる「納豆菌」、食酢をつくる「酢酸菌」などが代表例です。細菌は、酵母よりもさらに小さい単細胞の微生物で、合わさる食品から栄養分をとりこみ、短時間に分裂することによって大量な数に増殖していきます。

CONTENTS 発酵コンテンツ

ふくしまのイチ押し
発酵コンテンツ

ふくしまは、旅を豊かにするコンテンツに溢れています。
会津、中通り、浜通り、どのエリアを訪れてもその地域ならではの発酵文化を楽しむことができます。
お気に入りのコンテンツを見つけて足をのばしてみませんか。

TOURISM 発酵の旅

発酵文化の宝庫を巡る
発酵モデルコース

気になる発酵モノは現地へ行って自分の目で、耳で、舌で確かめるのが一番。
なぜその地で発酵文化が生まれたのか、ふくしまの人と空気に触れてその答えを見つけてみませんか。

INTERVIEW インタビュー

©️中西裕人

発酵学者 東京農業大学名誉教授 小泉 武夫さん

バラエティ豊かな発酵食が息づく
“発酵県”の名にふさわしい福島

発酵学者として福島の発酵を表現するなら、「3つの独立した発酵文化圏があること」と、「発酵食の種類があまりにも多いこと」の2つを挙げたいですね。
太平洋に面し、海の文化が息づく「浜通り」、畑の食文化に恵まれた「中通り」、日本海を航行していた北前船の文化も取り込んだ「会津」という3地域で、それぞれが独立した発酵文化を育んできました。

福島の発酵食はとにかく多彩です。柿と餅米、味噌を発酵させる「柿のり(柿餅)」、つきたての餅に同量の麹を混ぜて臼でつき、3月の桃の節句まで貯蔵する「餅甘酒」、納豆と米麹、味噌を同量で発酵させ農閑期に食べる「ごどう味噌」など、珍しくてワクワクするような発酵食品が数多くあります。他県の発酵食が平均15種類くらいとすれば、福島には実に40種類以上の発酵食が存在しているのです。まさに「発酵県」といえるでしょう。

日本の発酵文化を支えてきた大切な菌が「麹菌」です。日本酒や味噌、醤油、米酢も麹菌がいるから作ることができました。これらの発酵食をお腹に入れることで、私たちの健康も支えられています。
味噌や納豆には感染症の原因となる病原体が体内に侵入したときにすみやかに撃退する免疫パワーがあります。また、炊いたご飯に麹菌とお湯を混ぜて発酵させた甘酒は、体のエネルギー源になるブドウ糖、ビタミンB1、B2、B6、ビオチン、パントテン酸などのビタミン類の他、必須アミノ酸も含む、栄養豊かな“飲む点滴”です。

発酵食が美容に良いのは整腸作用のおかげ。腸内の老廃物を排泄に導き、細胞の新陳代謝を高めます。麹菌は、発酵過程でコウジ酸という美白成分を産生します。私は福島県小野町の造り酒屋に生まれたのですが、祖母がお酒にユズなどの柑橘を搾り、日本薬局方のグリセリンを酒の1割ほど混ぜたものを「美人水」と名付け、近所の人に配っていたんですね。グリセリンによって酒に含まれるコウジ酸やアミノ酸が肌に浸透しやすくなり、柑橘にはビタミンCが含まれます。しもやけやあかぎれの悩みが消えた、と評判だった「美人水」は、いま思うと大変理にかなった美容液だったというわけです。

発酵食は、米や麦、豆、野菜や魚といった原料を発酵微生物の力で作りあげる究極の自然食品です。私も今年で80歳になりますが、加齢臭が全くしないと言われますし、ご覧の通り肌もつやつやです。子どもの頃から発酵食を食べ続けてきた生き証人といえるでしょう(笑)。
“発酵県福島”で、多彩な発酵食をぜひ味わい尽くしてください。