INTERVIEW インタビュー

会津

八二醸造 専務取締役 髙久 祐一郎さん

古き良きものと新しいアイデアの融合で、発酵食品の未来が見えてくる。

時が巻き戻ったかのようで、とても趣きがありますね。

 暖簾にある通り寛政二年創業になりますので230年以上、私で9代目になります。店内の江戸時代からある帳場や黒漆喰の扉から、当時の面影が感じられるかと思います。実際に味噌づくりに使用していた醸造器具や醤油を入れた陶器の徳利なども置いてあり、来店されたお客さまにも珍しがられますね。中には懐かしいとおっしゃる方もいます。

醤油と味噌を作られていますが、製法は当時のままですか?

 全く同じというわけではありませんが、昔ながらの製法を、その時代時代に合わせながら受け継いできています。その中でもちろん変わらない部分もあり、例えば麹は麹蓋を使って丁寧に製麹していますし、醤油は「もろみ」から仕込みをして、木桶の中でじっくりと発酵・熟成させています。そして、伝統を受け継ぐという意味でいえば、代々当蔵に棲みついた「家つき酵母」が、うち独自の味を醸し出していると思っています。また、仕込む工程や桶などを近代化すれば効率は良くなりますが、やはり手間暇かけることで、商品に対して愛情がわきますし、それが八二醸造の味になっていると思います。

人には見えない菌の力や職人の経験に勝るものはないと。

 そうですね。同じ材料、仕込み方をしても違う醤油、味噌ができる可能性があります。でも同じ味、品質のものを作るためには日々変わる天気や気温、湿度を感じとる感覚や、見えない菌と対峙する経験値が重要です。そこが醤油、味噌、発酵食品の面白いところでもあり、難しさでもあります。

玄米を使った商品も多いんですね。

 「玄米プロジェクト」と銘打ち、玄米の利点に着目して商品化したのが、「玄米味噌」、「玄米醤油麹」、そして「玄米練り三五八」になり、全て会津産の玄米を使っています。玄米は炊くのが大変とか、クセがあって食べにくいという声もありますが、普段の食生活の中にある味噌や醤油などにすることで、どのご家庭の食卓にも馴染むのではないかと思います。
 古き良きものを残しながら新しいアイデアと融合させることで、発酵食品の未来も拓けてくるのではないかと思っています。