INTERVIEW インタビュー

中通り

大七酒造 代表取締役社長 太田 英晴さん

国内外の日本酒愛好家の方に、
生酛造りの上質な味を伝えたい。

大七酒造さんといえば「生酛造り」という言葉が浮かびます。

 生酛造りは、現存する酒造りの技法の中で最も伝統的な造り方と言われています。今からおよそ300年以上前、江戸時代の中期(元禄時代)に確立されましたが、時間も手間もかかる手法のため、明治時代の終盤にはいろいろと簡略化した「速醸酛」に移行する蔵元が増えていきました。戦後になると高度経済成長もあり、大量生産・大量消費の時代となり、日本酒自体の価値が下がってしまいました。そのような中でも生酛造りにはこだわってきました。

時代の変化の中、生酛造りにこだわってこられたのはなぜですか?

 それは上質な日本酒の味を知っていただきたいからです。生酛造りにおける昔ながらの製法は、酒づくりに必要な要素をすべて含んでいます。本物の日本酒は、蔵人たちが一切の妥協なく、素材や自然、時の流れと真剣に向き合わなければ造ることはできない。だからこそ、手間隙かかる生酛造りにこだわっています。

手法が完成されている分、生酛造りは味に変化をつけにくいのではないでしょうか。

 そんなことはありません。確かに特定の時代の生酛のスタイルというものはあるでしょう。しかしその味がいつの時代でも好まれるわけではありません。ましてやヨーロッパやアメリカ、アジア圏など世界に目を向けたら、おいしいと言ってもらえる保証もありません。
 酒造りは飲み手との共同作業的な部分があると思います。飲み手が、いつの時代でも残っていくお酒を育ててくれるといっても過言ではないと思います。以前は重厚な味わいが好まれても今は洗練されたものが好まれるといったニーズは、飲み手からしか聞くことができません。頑なに伝統を守ることも大変ですが、時代や飲み手の感覚に合わせるようにブラッシュアップしていくことも忘れてはいけないと思っています。

これからどのような酒造りを目指していきますか?

 酒類が多様化している時代で、あえて日本酒を飲んでいる方は「日本酒愛好家」だと思います。そんな愛好家に納得してもらえる酒造りを続けていきたいですね。
さらに今後はアジアの市場にも目を向けながら、日本の伝統文化ともいうべき日本酒の魅力を発信していくことが私たちの役目だと思います。