中通りモニターツアー 「キレイおいしいを追求する旅」〜発酵の多様性に学ぶ美発酵体験〜
2022.6.24
2022年5月21日、22日、「キレイおいしいを追求する旅」~発酵の多様性に学ぶ美発酵体験~をテーマにした1泊2日のモニターツアーを中通りで実施しました。
[1日目]
一行を乗せたバスが最初に向かったのは、阿武隈高地の里山にあるクラフトワイナリー「ふくしま農家の夢ワイン」(二本松市)。この場所ではかつて蚕の餌となる桑の葉が栽培されていましたが、時代の流れとともに生産者もいなくなり、休耕地として残っていました。
蚕業の衰退と東日本大震災を経験する中、「このままではいけない、二本松にもう一度元気を取り戻したい」と8名の農家さんが立ち上がり、2011年にぶどうの苗木を植え始め、翌年には地元産のりんごでシードルの醸造を開始、そして2014年に最初のワインが誕生しました。
出迎えてくれた代表取締役の齋藤誠治(さいとうせいじ)さんは、「地域活性化のためにという思いから、ブドウ栽培とワイン醸造が始まりました。」と、立ち上げの経緯を話してくれました。
案内された醸造場からはふわりとワインの香りが漂います。ぶどうを絞る圧搾機や熟成中のワインが入ったタンクを前に齋藤さんは、「同じ品種のぶどうでも育つ畑ごとに変わる個性の違いを楽しんでいただけるよう、収穫した畑ごとに醸造・瓶詰めしています。海外では木樽に入れて熟成させるものもありますが、うちではフレッシュなぶどうの香りと味わいを楽しんでもらいたいので、樽で熟成することは必要最低限にしか使用していません。」と、こだわりを説明してくれました。さらに齋藤さん流の嗜み方として、「日本酒でも氷を入れる方がいるように、私も氷を入れて飲んでいます。お好みで味わってもらうのが一番。」とのお話に、参加者は興味深く耳を傾けていました。
見学後はお待ちかねの試飲の時間。味わったのは人気銘柄の「一慶(いっけい)」と「一仁(いちじん)」。どちらもヤマ・ソーヴィニオンを使った赤ワインですが、栽培された畑が異なり、味わいもそれぞれ。「一慶(いっけい)」は豪華寝台列車「四季島」で提供されており、参加者もそのプレミアムな味わいを楽しんでいました。ほかにも白ワインの「夢のつぶ」や二本松市産の完熟りんご「ふじ」を使った「シードル」、摘果りんご「つがる」を使った「グリーンシードル」が振る舞われ、一行は大喜び。
試飲をたっぷり楽しんだ参加者は、お気に入りのワインをお土産に購入していました。
バスに戻る際にぶどう畑を案内してくれた齋藤さん。「葉っぱは酸っぱ苦くワインの渋みに似た味ですよ、試してみて。」と、ぶどうの葉をパクリ。好奇心旺盛な参加者は「あ、渋い!」「初めて食べた」など、初体験のぶどうの葉の味に驚いていました。
続いて向かったのは、300年以上前から丁寧に味噌・醤油づくりを行ってきた老舗「国田屋醸造」が営む「蔵カフェ 千の花」(二本松市)。敷地内にある蔵を改装したお店では、国田屋醸造の味噌・醤油を生かした料理やランチを楽しむことができます。
いただいたランチは「おにぎりセット」。国田屋の味噌が盛られた可愛らしいおにぎりや、さばの味噌煮、糀を使った三五八漬、さらに地元のハレの郷土料理「ざくざく」など盛りだくさん。
代表を務める大松佳子(おおまつよしこ)さんから、料理の説明や二本松の醸造文化について教えていただきながら、発酵が醸し出す滋味深い味わいを堪能しました。
二本松市を出発したバスは、1日目の最終目的地である土湯温泉「YUMORI ONSEN HOSTEL」(福島市)へ。2018年にオープンしたこの宿は、土湯温泉郷では珍しい貸切温泉付のゲストハウス。6種の客室、広々としたラウンジにはオープンキッチンがあるなど、これまでの温泉宿とは一線を画す新感覚の空間です。
こちらのカフェでは「美糀メニュー」として、福島県産の糀を使ったサンドイッチや甘酒が楽しめます。
ここで一行が体験したのは、三五八(さごはち)と味噌づくり、そして甘酒づくり。指導してくれたのは「糀和田屋」(本宮市)の代表、三瓶正人(さんぺいまさと)さん。三瓶さんから「日本には古来から発酵食品が身近にありましたが、三五八や味噌はその代表格。どちらも家庭で受け継がれてきましたが、現代では家庭で仕込まれるのが珍しくなりました。
当店では伝統的な糀蓋製法で糀づくりをしています。手間暇はかかりますが、糀蓋と木の糀室で熟成させることで味はもちろん、うま味や香りが格段に変わります。それだけではなく、麹菌の生育がよく酵素が強く入り込みます。製品の管理に何度も手入れが必要ですし、熟練の見極めも必要となる製法ですが、こういった作業を丁寧に行う事で品質の高い糀ができあがります。」と、お話しくださいました。
お話しの後は三五八づくりに挑戦。三五八とは「糀漬けの床」のこと。塩30g、米糀100g、蒸し米70gを密封保存できる袋に入れ、むらなく混ぜれば完成。あまりの手軽さに参加者も驚いていました。
続いて味噌づくり。材料は福島県産の大豆「タチナガハ」と、同じく福島県産コシヒカリを使った米糀、塩の3種。まず蒸して柔らかくした大豆を袋に入れ、手の平を存分に使って形がなくなるまで潰していきます。そこに糀と塩を混ぜ、しっかりと混ぜます。最後に空気が入らないように容器に入れて完成です。ここから半年から一年ほど、暗く涼しいところで熟成させれば食べごろになるとのこと。皆さん出来上がりを楽しみにしていました。
最後に三瓶さんが「世界一簡単」とうたう甘酒の作り方をレクチャーしていただきました。
筒状の容器に糀と70℃ほどのお湯を入れシェイク。6〜10時間保温すれば完成です。飲みきれない分は塩を入れて塩糀にすることもできます、と一石二鳥のアドバイスもありました。
参加者は糀のプロから糀使いを学び、発酵の魅力に興味津々の様子でした。
夕食までの時間は、土湯温泉街の散策へ。どぶろくやシードルを提供する「おららの酒BAR・醇醸蔵」や自家源泉で茹でた温泉玉子、特製プリンが人気の「源泉湯庵森山」に立ち寄り、足湯に浸かりながら飲んだり食べたり、夕暮れの散策を満喫しました。
宿に戻った一行を待っていたのは、お楽しみの夕食。メインは地元産甘酒に漬け込んだ鮭を使った蒸しわっぱ。ほんのり甘酒が香るやわらかな鮭にほどよい塩加減の鶏肉、山菜など具だくさんの蒸しわっぱに、箸が止まらず大満足。
食後には日本酒と発酵食品のペアリング体験を楽しみました。YUMORIの主任板倉(いたくら)ゆかりさんから料理とお酒の説明があり、人気酒造(二本松市)のお酒「Rice Magic Red(ライスマジックレッド)」にいちごを入れたものや、中通り名物の紅葉漬をのせたバケットなど、未体験のペアリングに皆さん感心しきりでした。ふくしまの発酵文化を満喫する盛りだくさんの一日になったようでした。
[2日目]
朝食を済ませた参加者は、およそ1時間半のヨガ体験へ。温泉街にある「カフェ&クラフト Lotus」のオーナーで「ロータスヨガスタジオ」(福島市)の代表、ガーヤトリー薫(かおる)さんの指導の下、凝り固まった体をほぐし、さらに腸の活動を促す効果のあるポーズも教えてくれました。「腸の活動は体内を温めることで活発になります。ヨガはその効果が期待できます。」と、ガーヤトリー薫さん。参加者の皆さんも、朝から身体を動かしてスッキリした様子がうかがえました。
身体をほぐした後は、宿から10分ほどの高台にある「アンナガーデン」(福島市)へ。ここにはいま注目のクラフトビールを製造する「みちのく福島路ビール」があり、工場併設のショップ&バー「PROST(プロースト)」では、ビールの直売や飲み比べセットなどを楽しむことができます。
こちらの地ビールは、福島県産米「ひとめぼれ」と福島県オリジナル酵母「うつくしま夢酵母」を使った「米麦酒」、桃やりんごのラガーなど種類豊富。ビールの味を選ぶ楽しみを体験しました。
続いて向かったのは、古民家をリノベーションした「古民家CHIEF+」(福島市)。こちらでランチをいただきました。
メインはラクレットチーズたっぷりの、お店自慢のローストビーフ。ご飯とサラダ、庭先で採れたタケノコ入りのスープも付いて、さらに食後にはいちごジャムを添えたかき氷など、ボリュームに大満足でした。
次なる目的地は、先人たちの知恵が生み出した発酵食品「漬物」の名店、「福島りょうぜん漬本舗」(福島市)。
漬物について詳しく話をしてくれたのは、自身を「漬物王子」と称する4代目の森藤洋紀(もりとうひろき)さん。「漬物は乳酸発酵食品。うちでは旬の野菜を手間ひまかけて漬けています。野菜の食物繊維が腸の中をきれいにして、乳酸発酵は腸内細菌が過ごしやすい環境を整える。漬物は優れた健康食品だと思っています。今は試食の段階ですが新しい商品も開発中です。」と、漬物愛を熱く語ってくれました。
皆さんは試食用に並ぶ様々な漬物に手を伸ばし、お気に入りの漬物を買い求めていました。
お店のスタッフに見送られ向かったのは、最後の目的地「福島県観光物産館」(福島市)。こちらでは福島県の各市町村の名品がずらりと揃い、特にお酒は県内全域から選びきれないほどの種類があり、観光客だけでなく、地元の買い物客でも賑わいます。
ふくしまの名産品をあれこれ品定めしながら、旅の思い出となるお土産を購入し、帰路につきました。
今回のツアーは、ワインの試飲や味噌づくり、ヨガ体験など内容盛りだくさん。参加した皆さんにとって、発酵の多様な可能性に触れながら、キレイ&おいしいを体験できた、大満足の2日間となったようでした。