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会津モニターツアー 発酵の真髄を知る旅~風情醸す麹どころ会津に学ぶ~

2022.6.27

2022年5月24日、25日「発酵の真髄を知る旅」~風情醸す麹どころ会津に学ぶ~をテーマにした1泊2日のモニターツアーを会津で実施しました。今回の旅は、ファムトリップとして、県内外の旅行会社の皆さんと、一般財団法人発酵美人協会代表理事の三和文子(みわあやこ)さんに参加していただきました。
-1日目-
①郡山駅
③七日町散策
④手前味噌作り体験・東山温泉 原瀧(泊)

-2日目-
⑩郡山駅

[1日目]
会津の伝統文化や古くから今に伝わる発酵文化を、見て・触れて・味わうツアーということで、まず訪れたのが、趣のある街並みの七日町通りにある「渋川問屋」(会津若松市)。
およそ120年以上の歴史をもつ元海産物問屋で、現在はその重厚な建物で会津の郷土料理をいただくことができます。
この日は、会津東山温泉の芸姑さんによる舞を鑑賞しながら、会津地方の伝統料理、「にしん山椒漬」や「棒たら煮」などが並ぶ昼食をいただくという、贅沢な時間を過ごしました。

昼食のあとは、芸姑さんと一緒に七日町通りの散策へ。大正浪漫の雰囲気漂う街並みは多くの観光客や県内外からの修学旅行生も訪れる観光スポット。通りには伝統的工芸品である「会津漆器」や「会津絵ろうそく」のお店をはじめ、蔵を改装したスイーツ店などが軒を連ね、参加者たちは風情あふれる街並みに魅了されながら散策を楽しみました。
次に向かったのは、1日目の宿となる会津東山温泉「原瀧」(会津若松市)。ここでは老舗麹店直伝の味噌づくりを体験しました。指導してくれたのは、創業96年の歴史を持つ、会津坂下町にある「目黒麹店」の4代目、目黒正博(めぐろまさひろ)さん。味噌の種類や効果、さらに“麹”と “糀”の違いについて「麹は中国から伝わった漢字。現在では米や麦、豆などからつくられるものを表します。糀は和製漢字で、 米からできる“米こうじ”のみを表します。糀味噌を溶くと米の粒が花を散したように見えるでしょ?そういう由来も一部にあるんですよ。」と、参加者の緊張を解くように愉快にお話を進めてくれました。
目黒さんが味噌づくりに使う材料にはこだわりがあります。上質な国産大豆100%と、創業当時から製法を一切変えずに守り続けてきた店秘伝の麹。麹を作る米は会津坂下町産で、昔からずっと木箱を使っています。「うちの商品に使用する材料はほとんど地元産。水はうちの井戸水を使っています。軟水で、やさしい口あたりの水です。」と教えてくれました。参加者の目の前に用意されたのは、蒸して潰した大豆と米麹に塩を混ぜたもの。この2つを混ぜ込んでいくのですが、想像以上に力のいる作業。目黒さんが「味噌づくりはダイエットの効果もあるんですよ。」と、皆さんを笑わせます。
しっかりと混ぜ込んだ後は容器に入れていきます。「空気を抜くように隙間なく詰めて」という、目黒さんのアドバイスを受けながらしっかりと詰めていきます。仕込み終わった味噌はそれぞれが持ち帰り熟成させることに。
ここで目黒さんから保存について「ビニールの上からふた塩をする、天地返しをする、カビが生えた場合の対処方法」などのコツも教えていただきました。
また目黒さんは、「手作りの味噌を使った味噌汁を1日に2杯以上いただくと血圧が下がるというデータもあり、その他にもがんの予防効果、血管の若返りなどの効果も期待できると言われています。皆さんが作った味噌で1日1食、お味噌汁を食べていただけたらうれしい」と、参加者に熱く語ってくれました。
最後に「麹のシャーベット」の試食もあり、目黒さんは「甘酒を飲むと化粧のノリが変わる!」と、ユーモアを交えて話してくれました。シャリッとした食感と砂糖を一切使わない口当たりの優しい甘さに重労働の疲れも吹き飛んだようでした。

夕食では、このツアーのためにアレンジしていただいた宿特製の発酵食品を使ったお膳が振る舞われました。地元酒蔵の酒粕を使った甘酒やバーニャカウダ風の酒粕ディップ、にしんの山椒漬け、野菜の粕漬け、さらに馬刺しやこづゆ、会津のそばなど、品数の豊富さに一同驚きの様子。
「会津東山温泉原瀧・今昔亭」総支配人、平賀茂美(ひらがしげみ)さんからは、「発酵食品は会津の食文化を支えるもの。先人たちの知恵と伝統を守っていかなければいけません。いつもなら朝食時にお出ししている甘酒も地元の酒蔵の酒粕を使っています。蔵人が一生懸命醸造したものを廃棄してしまうのはもったいない。酒粕を再利用する食文化は日本独特のものです。」というお話がありました。参加者は、会津に受け継がれる発酵食文化の歴史や、文化を大切にしながら新たな取組を推進する平賀さんのアイディア力に、しみじみと感じ入るものがあったようです。

[2日目]
朝食後、宿を出た一行が向かったのは、ふくしまの地酒を豊富に取り揃える「会津酒楽館 渡辺宗太商店」(会津若松市)。代表の渡辺宗太郎(わたなべそうたろう)さんが「福島の地酒を中心に取り扱っています。会津は酒蔵が多いので、年間を通して、季節商品、定番商品など、数えたら300種類以上の銘柄が存在すると思います。その中から厳選したお酒を並べています。」と説明すると、参加者は目を丸くし、酒瓶がずらりと並ぶ棚を見まわしながら酒処ふくしまを実感していました。

続いて向かったのは老舗の酒蔵「ほまれ酒造」(喜多方市)。こちらでは酒蔵のほか、敷地内にある日本庭園「雲嶺庵(うんれいあん)」を見学しました。新緑が池に映る日本庭園は見事な美しさ。心休まる風景にしばし寛ぎました。
直売所は蔵元ならではの品揃えで、常時10種類以上のお酒を試飲することができます。参加者は気になる銘柄を味わいながら、お土産を買い求めていました。

ほまれ酒造を後にした一行は次の目的地「若喜商店」(喜多方市)へ。江戸時代から続く醤油・味噌の醸造元で、代表取締役の冠木紳一郎(かぶきしんいちろう)さんから喜多方のレンガ蔵の歴史や醸造文化、若喜商店の醤油・味噌の醸造方法をうかがい、お店の宝とも言えるもろみ蔵を見学。冠木さんの淀みない滑らかな口調に、参加者はじっと聞き入っていました。お店自慢の醤油や人気のだし醤油、味噌を試食し、風味の違いを味わっていました。
お昼時となり、一行は「道の駅あいづ 湯川・会津坂下」(湯川村)へ。こちらでは、このツアーのためにレストランの加藤邦明(かとうくにあき)シェフが考案した発酵ランチをいただきました。盛り付けも美しい品々は、どのお料理にもヨーグルトや甘酒、キムチ、酒粕、塩麹など発酵食品がふんだんに使われており、道の駅で実際に販売されているものが使用されています。レストランマネージャーの丸谷千草(まるやちぐさ)さんからは料理の説明の他、会津の風土が醸す発酵食品と郷土食の深い結びつきなどについてお話しいただきました。
ツアーの締めくくりとなる最後の訪問先は、「鈴善漆器店」(会津若松市)です。こちらでは会津漆器の蒔絵体験を行いました。伝統工芸士の中村光彩(なかむらこうさい)さんに教わりながら、塗椀や塗皿に漆で絵柄を描き、その上に10色以上用意された色とりどりの蒔絵粉をつけて、オリジナルの漆器を完成させました。自分だけの会津漆器は、味噌汁のお椀として使うこともでき、会津の発酵文化を学ぶ旅のよい記念となったようです。
旅の終わりにあたり、参加者から今回のツアーについて「味噌づくり、蒔絵体験など旅が終わった後も思い出が残るツアーはお客様に喜ばれるのではないか」「発酵に特化したコンセプトのあるツアー内容は受けそう。さっそく参考にしたい」「もっと発酵の説明があるとよい」など、旅行会社らしい視点の感想が聞かれました。三和さんからは「発酵食品といっても地域が変われば料理も味もまったく違うものになる。会津の食の歴史や、発酵食文化を知ることができてよかった」と、話されていました。
今回の「発酵の真髄を知る旅」は、会津という風情醸す地域に受け継がれている発酵文化の体験を通して、発酵ツーリズムの魅力をさらに掘り下げ、広げていくきっかけとなることでしょう。